馬の屠畜現場見学してきました。

とある久留米の居酒屋で、あれこれ話をしていたんですけど。
「いただきます」ってなんだよ、と。


もちろん感謝の言葉ですから、例えば調理をしてくれた人、作ってくれた人、もって来てくれた人などなどへの感謝でもいいんですけど、やはり「命」を食べることによって自分の命を繋ぐことが出来る。その事への感謝じゃなかろうか、という結論に。
ちょうどつまみが馬刺しだったもんで、んじゃー見に行けるかなあ、とアポイントをお願いした次第でした。正直、興味半分。


というわけで、「木稲(このみ)畜産」さんのご好意で、馬にまだ命がある状態から、お肉になるまでの全てを見せていただきました。


このみさんとこは、自分のところで牧場をもっておられます。北海道産の子馬を仕入れ、自社牧場で育てておられます。期間はさまざま、短ければ3年から、長いと8年とか。


屠畜場での一枚

その日の馬は700kgと400kg。手前の子が700kg。ちなみに牝馬です。隠れちゃってますけど、後ろに400kgの子が。400だとちょっと痩せ馬やねえ、という印象。でも普通にでかいです。


ここからは、文字での説明にします。画像はおおむねありますが、耐性の無い人には厳しかろう、ということで自粛。


まずは、手綱を床のリングに固定、ある程度動けなくします。次に銃で眉間に打撃をあたえ、気絶させます。馬は気絶した瞬間ひざを折り、床にくずれおちます。体重700kgですから、地響きがするほど。すかさずのど元の皮を切り裂き、首の動脈をさいて放血。気絶した状態ですので、心臓は動いたままです。
馬の血液量は約9%とのことなので、比重1としても60L程度でしょうか。これが肉の中で固まると品質ががたっと落ちますし味にも影響がでますので、皆さん動きが素早い。


しばらく放血、次は後ろ足の間接部に切れ目をいれフックを掛け、逆さづりにし、更に放血。放血がおさまるとフックからおろしステンレスのベッドに寝かせ、丁寧に腹部から皮を剥いでいきます。


ある程度皮を剥ぐと、頭や足先など関節をはずして落とします。


途中肛門辺りに切れ目をいれ直腸の先端部分を取り出し、ビニール袋できびります。内容物からの汚染防止です。
再度後ろ足をクレーンで上げ、包丁をいれながら内臓を大きなステンレスのバスタブに移します。内臓(ホルモン)は検査官の鑑定をうけ異常があれば廃棄、問題なければ食用へ。


そこからはおおまかに肉を分けます。ブロック状になったものは「肉」です。
前足、後ろ足、途中電鋸で肋骨を切り、ばらばらになった「肉」は天井の移動フックで吊り下げられ別室へ。


繁忙期や気温のあがりやすい夏季はこのまま冷蔵庫で保管することも可能なようにしてありました。ほんの数時間なのでしょうけど、鮮度管理に気をくばってあります。

余談ですけど、昔の肉屋の冷蔵庫は水冷式だったんよー、と。冷水が通るパイプが保管庫のなかに張り巡らされており庫内を冷やします。現在では空冷が主流ですけど、昔の空冷は肉が乾いちゃうんです、とのこと。なるほど。


別室に移動した肉は作業台の上でひたすら筋をとり部位ごとに分ける。分ける。分ける。
そうすると、私たちがおなじみの「肉」となります。