生産の現場からin福岡教育大学 アンサーblogその一

日ごろ、あちらこちらにお邪魔していて、そのなかで想う事をいっちょ喋ってみらん?とのお誘いにほいほいのって、90分のお時間いただいて福岡教育大学で学生さんに講義?してきました。


九州の農業のスタイルと北海道の大規模農業のスタイルの対比、そこから国外の大規模農業への対比にもちこんで、オーストラリアの菜種農家の事例、そこから菜種油の作り方へ。そして、bure君の海苔の話へ。90分に農業から加工、物流の話までぶちこんだのでかなりの駆け足、強行軍でした。

あえて、有機だとか、農薬がどうこう、という話は自己紹介のときだけにとどめておきました。いきなりだとハードル高いかなあ?というのと、メインテーマは「生産の現場にて」というお題だったのでちょっと抹香くせえかなあ、と思ったんですが、アンケート読んでみると、なかなか引っかかってくれたようで、おいちゃん嬉しいよ。


というわけで、授業後いただいた質問票を元に、アンサーblogを書いておきます。

  • Q 買い付けに行くとき、どういう基準で選んでますか?

A:まずは加工品。あまり高度な精製をしていないもの。素材の素性ができる限りはっきりしているもの。美味しいもの(主観ですが)、昔ながらの作り方をしているもの、人間の都合で保存料や合成調味料をいれていないものを選んでいます。自分が食べたい!と思うもの、というのも重要。もちろん、作り手の想いも。

農家さん、なんですが、やはり生産物への思想、というか、「なんで無農薬でやるのん?」ということを伺いますね。あと、土をどれだけ見ているのか。無農薬でやる、というのはそれだけ手がかかることでもありますから。どんな肥料(動物性のものをいれているのか?とかね)をどれだけ使っているのか、

あとは、人柄。すごーく極論ですが、作物に人柄がでます。にぎやかなひとは、にぎやかなものを。控えめなひとは、控えめな、でもじっくり主張するものを出荷してくるから侮れない。店も、同様ですよ。

  • Q 生産者はどうやって見つけているんですか?北海道の農家さんとどうやって知り合うのですか?

A:だいたい、ご紹介です。あの人の紹介なら、というカンジ。飛び込みで生産者がこられる場合もありますし、農産物の展示会や勉強会で「この人は!」と出会いがあって、ということもあります。

  • Q なぜ、福岡県産オンリーだけでなく、遠く離れた北海道との農家さんともお付き合いするのですか?

A:理由は3つあります。

ひとつめは、リスクヘッジ。福岡の気候と北海道の気候はちがいますので、豪雨で福岡がだめでも他の地区から仕入れるために、普段からのお付き合い、というのが重要になってきます。売るものが無い=売り上げが無い、ですから、私も生活できませんし、生産者もしかりです。消費者は他のお店で買えばいいだけの話ですが。

ふたつめは、生産量。おかげさまでそこそこの量を販売させていただいておりますので、北海道の生産量は魅力です。また、収穫量がすくないものの、味の良い農法をしやすい、というのも北海道の魅力です。

みっつめは、生産時期の違い。「ないものは、無い!」と威張っておりますが、やはりジャガイモ、玉ねぎ、人参などは一年中ほしいなあ、と。でも、九州の玉ねぎは9月から10月で終了、ちょうどそのころから北海道の玉ねぎが収穫、出荷がはじまり、3月末のたまねぎ出荷までつなぐ、という産地をリレーすることができます。昨年は北海道が長雨で、例年の1/3の収穫高だったのたまねぎが見当たらず(あっても、値段が高すぎる!)苦労しております。ま、そんな年もあるやねー。

  • Q 宗像では二毛作が行われていますが、生産者のかたもされていますか?

A:YES。米の裏で麦、とか。ちょっと変わったところだとごぼう、って人もいたり。

  • Q 有機栽培と自然栽培の違いは?

A:有機栽培は「栽培法を第三者機関が認定」したものです。
具体的にいうならば、栽培中に化学合成農薬と化学肥料は使用しない(ただし、指定された天然系農薬の使用は認められています)、また、作物によりますが、3年間その畑(圃場、といいます)に使用していないことを、国が審査、認定した認証団体が検査員を派遣して、使っていないということを確認する、ということが条件です。主に書類が、というのが現状ですが。
この認定を受けた生産者のみが、「有機農産物」あるいは「有機栽培」、「有機○○」の表示とJASマークをつけて販売することができることになっています。
また、数年置きに基準や使用できる資材の見直しなどが行われています。

熊本県有機農業研究会
http://www.kumayuken.org/jas/index.html


自然栽培、とひとくちにいいますが、特に決まった方法というのはありませんし、生産者によって微妙にちがったりもします。基本ラインとしてはもちろん無農薬、無化学肥料ですが、畑は耕すのか?(不耕起栽培など)、種は買うの?(自家採取のみ、という人もいます)などの差異があったりもします。公的な(=農水省の管轄下にある)認証団体はありません。

  • Q:無農薬と有機栽培は違うんですか?

A:認証を取っていれば「有機栽培」とっていなければ「栽培期間中農薬不使用」という表記になるかと。「無農薬」と店頭で表示するのは微妙。正直、まぎらわしい表示かな。うちはしてないです。化学肥料はOKでしょうしね。

ちなみに、減農薬栽培、減化学肥料栽培の認証、というものもあります。

(財) 福岡県農業振興推進機構
http://www.f-ap.org/project/ninsyou/index.html

じゃあ、強く効く薬をかけちゃえばいいじゃない、とか思っちゃ駄目ですよ?(笑)

  • Q 出身が鹿児島なんですが、鹿児島の農家さんとかいますか?

A:いるいる、いっぱいいる!九州では、鹿児島は有機農業が盛んですよ。
やはりさつまいもや、果樹、お茶なんかの農家さんもいらっしゃいます。

  • Q 育てるのが一番難しい植物ってなんですか?

A:なんだろう?土地の条件によると思います。痩せ地を好むさつまいもは、栄養豊富な土地では育てるのが難しい(育つけど、ちーとも美味しくない!)しねえ。

  • Q 農業の若者離れの影響は?

A:「農家の長男が都会にでてってもニュースにならんけど、都会の人が農村に入ってくるとニュースになる」といわれて久しいんですが、やはりありますねえ。農家さんの平均年齢がアラ古希だったり、じゃあ農地を集約して大規模化、コストダウンを図ろうとしてもなかなか進まない、という現状があったりして。

このへんは土地政策とも絡んでくるんで述べませんが、農業エリアと居住エリアをはっきり分けなかった日本の土地政策は失策であった、と私は思います。莫大な農業補助金を投じて農地改良を行い、あげく農業がしやすいように平たく作った土地に大規模なスーパーが建つ様にはめまいがします。

結局言ってるなあw

だもんで、今後はいかに若い人を農業に入りやすくするか。産業としての参入障壁、心理的な参入障壁を低くするか、が鍵じゃないかなー、と思うし、そういう動きを注目、サポートしていくのも私の仕事のひとつです。

  • Q:北海道で農業をしている方は、雪が積もっている間はなにをしているんですか?

A:そりゃもちろん遊んで暮らして・・・いるわけない!
倉庫に入っている農産物を選別、出荷したり、熱心なかたは勉強会などに参加されたり。もちろん、旅行されるかたもいらっしゃれば、出稼ぎにいかれるかたも。

  • Q:農家をやめたい、と思うことはありますか?

A:ここを読んでくれてる農家さん、ぜひコメント欄にお願いします。

  • Q:農業でも漁業でも、一番育てるのにお金がかかるのはなんですか?

A:投資金額、というならばおそらく魚の養殖かな。想像でしかないですけど。農業ならば、イチゴとか。ハウスなどの設備代、加温するための燃料費など、かな。LEDで光合成させる野菜工場なんかも、投資は大きいだろうなあ。経済産業省から補助金でるそうですが。農林水産省でないところがポイントね。

  • Q 今から農業するならば、何をしますか?どうしたらいいですか?

A:ますはどこかに研修いきます。ウーフとか、研修生募集、とかありますんで、そこで数年頑張って知識と経験、お金(あまりたまらんけど)をためて、自分の目指す農業の軸をつくります。有機なのか、慣行なのか、葉物などの軟弱野菜なのか、果樹なのか。九州と北海道はちがいますし、関東ですと消費地に近いですが、競争も激しいですよ?
それぞれメリット、デメリットありますのでまずはそこから。農地とか、家とかは、まあこれからはなんとかなるでしょう。そのへんは意外と楽観してます。

  • Q:じゃあ、農業するならば、なにをつくります?

A:なにしようかなあ。生活を考えないなら、やはりお米でしょうか。日本人だもの。

  • Q 農地って、借りるならば何年くらい借りれるんですか?

A:普通、複数年ですし、10年とかそんな単位なんですが。作物によって好む土の性質がちがったりしますんで、土が出来たころに「返して」と言われてトラブルになる、ならずに泣き寝入り、なんて事例もあります。相続で売ってしまった、とかね。また、数年前に補助金をもらうための認定農業者になるために、これまで3反でよかったのが5反になったので返してくれ、といわれて、と国の政策変更により農地問題が起きた事例もあります。

  • Q 生産よりも費用がかかって赤字になることはあるんですか?

A:わりとあります。大雨や、旱魃、病気の流行などですね。

  • Q ぶっちゃけ、農家って儲からない?

A:んなこたないです。やり方ですよ。BMW乗ってるひともいますし。ただ、自分の理想の農業をめざすひととお付き合いすることが多いので、お金はぼちぼち、という人もいらっしゃるのは確かです。

  • Q なたね油と普通の油の値段のちがいはありますか。

A:ありますねえ。というか、今回ご紹介した平田産業さんの油と、業務用スーパーで安売りしている油だと、10倍くらい違うんじゃないかな?じゃあ、平田産業さんがぼろ儲けしてるかっちゅうと、そうでもなかったり。講義の中でお話した、生産のコスト、検査のコスト、輸送のコスト、製造のコスト、などなどの諸条件が効いてきます。

  • Q 油の脱色の方法を教えてください

A:濾紙をつかったり、活性白土と呼ばれるものに吸着させます。

  • Q 油を作るときの水は再利用しますか?

A:してるんじゃないでしょうか?今度、きいときます!

  • Q 油の工場はどんなところにありますか?

A:港にちかいとこにわりとありますよ。知多半島とか。
日清だと、岡山、大阪などですね。地図をクリックすると立地がわかりやすいです。
http://www.nisshin-oillio.com/company/jigyousho.shtml



ひとまず、こんなところで。
海苔に関する質問、お店に関する質問はエントリーを分けます。



油に関しての参考サイト

社団法人日本植物油協会
http://www.oil.or.jp/yougo/index.html