パッチワークの森ってなんだ?


二月最後の日曜日。前夜まで雨が続いていたものの、当日は気持ちよい初春の日差し。


というわけで、黒木の「山村塾」森林コースのイベントでもある「パッチワークの森づくり」に参加してきました。パッチワーク?


「パッチワークの森づくり」の目的
http://patchmori.web.fc2.com/what/what_patch.html


日本の山林の大半は杉、ヒノキなわけです。終戦後、復興にともない住宅需要の増大が見込まれたため、日本では大規模な一斉造林手法が発達しました。まあ、杉やヒノキにあった林道をつくり、植林し、切り出して、というわけですね。


しかし、マンションの発達、外材の輸入増加など国内の木材需要の低下に伴い、林業は不採算産業となります。それは結果としてスギ、ヒノキ人工林の手入れ不足を招きました。


で、「パッチワークの森づくり」はそういった手入れ不足の山林のなかでも、特に緊急で手入れが必要なところ、景観に配慮したり、風倒木被害を受けた場所などを中心に、小さな森作りを行っていく、という新しい手法です。
これまでは、すべての木を切り出し、あたらしくさまざまな樹を植えていく、という手法が主だったのですが、予算面、人的資源(プロの林業家が成り立ちづらい)の面で難しいわけです。これを、ボランティアでもできる作業体系、サイズに落とし込んでいこう、というのが「パッチワークの森作り」
もちろん、企業や団体、市民の協力を得ながら、地域との連携を目指す、という目的もあります。新しい森と街の「提携」「もやい」ですね。


写真の通り、風倒木で被害をうけた山林を、15m四方で切り開いてあります。


後ろの杉の細さにも注目。「線香杉」といいますけど、本来は間伐すべきなんですね。でも、その手入れをするお金、人が無いのが現状です。こんな細い樹ばかりの林を「モヤシ林」ともいいます。

こういった「モヤシ林」を切り開くデメリットもあります。いきなり森に穴が開くわけですから、さらに周辺の樹が倒れる危険性もありますし、地面も乾燥しがちです。広葉樹を植えるのですから人工林としての価値は落ちるでしょう。


しかし、個人所有の森や、村の共有林は、間伐、枝打ち、下草刈などの管理が遅れ、不健全なモヤシ林となっていることが多いんです。そんな森は他の動植物の生息する余地が少なく、台風などの災害に見舞われた場合、多くの被害を受けるリスクが高くなります。


そういった「モヤシ林」に、ボランティア団体である山村塾の作業能力に見合ったサイズの「パッチワーク」を施していくことによって、森の中にふたたび光が差し込み、多様な下草が生え、ふかふかの土壌が戻ってくる。そういう保全された森が、再び水源涵養力の高い健全な森によみがえり、本来九州の森にあった生態系が復活する。そんな可能性があります。



20日間ボランティア多国籍軍(日4、独1、韓2、米1)と、KDDI九州総支社の方々など、スタッフの方ふくめて総勢20名弱。韓国語、英語、日本語が飛び交う植林作業でした。公用語は黒木弁ですけど(笑)


午前中は山桜、コナラを切り開いた場所に植え、ウサギ食害防止のネットを張り。生分解性プラスチックのネットだそうで。5年ほどで土に還るとのこと。へええ。
午後からは山の尾根部での作業。平地で楽なんですが、その分本数が多くてそこそこ動けたかなあ。


ちょうど、杉の枝をとりにきてたおっちゃん。
近所の方だそうですが、粉末にして線香の原料となります。


参考:馬場水車製粉にお邪魔してきました
http://d.hatena.ne.jp/wwwkurashijp/20100217/1266476639


おっちゃんが枝を整え、奥さんがまとめて、とご夫婦での作業。鎌の使い方に見入ってしまった。鎌でさくっと枝を引き寄せ、さくっと不要な部分を落として、と手馴れた風なんですけど慣れてないと難しいんだよなあ。



ウインチでひっかけて、トラックの荷台いっぱいに。
間伐、枝打ちをした際にでるのですが、ほっておいても枯れにくいし、邪魔だし。
杉の葉の粉末から線香へと加工することによって、山の生活がまわっていきます。今風にいうとエコシステム?鯨もそうですけど、日本人はこういうのが得意ですよね。


参考:馬場水車場の「おせんこう」入荷デス
http://d.hatena.ne.jp/wwwkurashijp/20090421


ちょっと余談。


小国あたりにいきますと、山をみて「自然がいっぱーい!」なんて思われるかもしれませんが、あれほとんど人工林なんですね。昭和20年代までは、きこりが木を切り、筑後川をつかっていかだを組んで木を流し、大川で製材、家具に組み立てておったそうです。もちろん、そのあと植林をしたのですが、大規模に杉やヒノキばかり植えたもんで(そっちのほうが管理、製材などの面で楽なんです)、どこを見ても杉、ヒノキというのが現状。花粉症との関連も言われており、遺伝子組み換えによる「花粉が少ない杉」なんてのを開発するんだ!ってやってるけど、どうしてそういう発想になるかなー。アホじゃなかろうか。


畑だって、もともと原野だったところを開いて耕し、水をひいてきたわけです。けっしてそれは「自然」ではないです。一度、人が手をいれたところは、永続的に手入れをしなければいけない。開くのは技術の発達により一瞬でできるようになりましたが、「自然」に還るまでには相当の時間がかかるでしょう。

自然がいい、という自然原理主義者なつもりもありませんが、これまで手付かずだったところを、人間本来の力だけではなく「技術」をもって開くときには、それ相応の覚悟が必要じゃなかろうか、と思うわけです。