粕取り焼酎と筑後の農業文化

先日、杜の蔵さんに「粕取り焼酎」の蒸留見学にお邪魔しました。
実際の蒸留行程は後に回すとして、まずはそのバックグラウンドのお話。


杜の蔵で粕取り焼酎、といえば「吟香露」が有名ですが、あれ、人気ランキングとか見ると米焼酎の部門になっちゃうんですなー。まあ、作り方は一緒っちゃあ一緒ですけど、原料ちがうやーん、と。グラッパとブランデーが一緒、つってるようなもんですぜダンナ。


今回は「吟香露」ではなく、「常陸山」ブランドで販売されている「さなぼり」焼酎のお話。



さなぼり、ってなんぞー?ということなのですが漢字で書けば「早苗饗」
「さなぶり」、とも言います。というか正式には「さなぶり」、なんでしょうけどこっちの方言では「さなぼり」
読んで字のごとく、この粕取り焼酎は5月頃に行われる田植え、村総出の農作業のあとの骨休めで飲まれていたそうです。


で、そもそもは堆肥(下粕、といいます)のほうが目的で、焼酎をとりだしたのはあとになってから。
田んぼで米をつくり、その米で農閑期に酒を醸し、その酒粕に籾殻と米ぬかをあわせて肥料をつくり、寒肥として田に戻して、また稲を植える。そして、早苗饗。こんな循環が室町から江戸の時代にはあったんですねえ。