超高温滅菌牛乳(UHT:Ultra high temparature)

沸点100℃前後の牛乳に150気圧の高圧をかけて、120℃ないし130℃で2秒間加熱し、細菌を完全に死滅させる方法である。

日本のUHTは海外の基準とは異なっている。国際的には130℃〜150℃で数秒間加熱し、それを滅菌パックに無菌充填して6ヶ月から1年日持ちさせる牛乳のことをUHTと称している。そのため海外の専門家は、日本のUHT乳をJ-UHT(J=Japan)と呼んで区別している。

 UHT製法は、イギリスのAPV社が、暑さの厳しいアジアの途上国の品質劣悪な牛乳の腐敗防止のために開発した技術で、その滅菌効果は99.9999%以上である。だが、雪印事件で明らかになったように、菌は殺せても菌がつくり出した毒素は高温でも消えないため、杜撰な管理下では食中毒を完全に防止することはできない。

日本のUHT乳は、ピークの超高温に達する前の段階で、85℃前後で数分間予備加熱されるのだが、この行程が牛乳により強度の熱変性を与えているようだ。低温殺菌以外は、蒸気との熱交換による過熱が主な方法。いきなり100度以上まで上げられないので、予熱の時間も含めた積算温度が熱変性にとって一番問題では。
この予備加熱で、牛乳たんぱく質の一種で熱に弱いホエーたんぱく(※1)が消え、カルシウム、ビタミンは体内に吸収されにくくなる。

日本のUHT乳は、単に120度ないし130度で2秒加熱したものではないということだ。欧米では、高圧下で高温の蒸気を牛乳に直接混ぜて加熱し、その後で冷却し、蒸気の水分を取り去るので、予備加熱を必要とせず、直接法といわれて、日本でも一部の中小メーカーが採用している。


 また、UHT乳には独特の“こげ臭”(クッキングフレーバー:調理臭)がある。生乳の味わいに近い低温殺菌乳とは明らかに違った香りがするのだが、これがこげ臭といわれる香りである。UHT乳を飲み慣れている人にはこの香りがおいしさの要因であるようだ。そして、牛乳嫌いの人が飲まないのも、このこげ臭が原因であることが多い。

 さらに、UHT乳は生乳を超高温で滅菌処理するため、低温殺菌牛乳ほどの良質の生乳を特に必要としない。製品では1ミリリットル中に5万個というのが基準値。原乳段階では数百万個、というものもある。UHT殺菌ならば、そんな牛乳でも、何とかなるのです。 そのため価格が安く抑えられ、大量生産にも適している。また、賞味期限が比較的長いので、広域流通にも適している。

※1【ホエーたんぱく】熱に弱いタンパク質で、同じく熱に弱いビタミンB1、Cを含む。人体では作ることの出来ない「イオウ」を含むアミノ酸が含まれている。


全国で「低温殺菌牛乳」と表示して売られている製品の中に、72〜85℃で15分〜1時間加熱した牛乳が存在する。しかし牛乳の組成を変質させないぎりぎりの殺菌時間は、75℃・15秒までなのだそうだ。これらの長時間加熱牛乳は、「(高温滅菌牛乳に比べれば)低温(で)殺菌(している)牛乳」だと僕は理解している。