海苔の胞子培養を見てきました

やー、今年もやってまいりましたねえ、って野球じゃねえんだけどさ。ちなみに野球やサッカーにはまったく疎いツルヒサです。無理。


ってなわけで、復習。


海苔の網入れにいってきたよ!
http://d.hatena.ne.jp/wwwkurashijp/20091020

海苔の網入れにいってきたよ!その二
http://d.hatena.ne.jp/wwwkurashijp/20091021

冷凍海苔網の収穫へ
http://d.hatena.ne.jp/wwwkurashijp/20091117

有明の海で海苔を収穫するぜ編
http://d.hatena.ne.jp/wwwkurashijp/20090124

港に戻って海苔をつくるぜ編
http://d.hatena.ne.jp/wwwkurashijp/20090126

ちょっと時系列で並べなおしてみました。
本日お届けするのは、培養場で大切に育てられた蛎殻糸状体(かきがらしじょうたい)と呼ばれる海苔の種のお話。網を入れる前のお話。


ちょうど、今の時期が海苔網の支柱立ての時期。コンポーズとも呼ばれるグラスファイバー製の支柱を立てていきます。
と、さらっと書いちゃうと「ふうん」で終わるんですが超重労働。らしい。
「海苔の仕事はねー、支柱立てと、支柱の回収(海苔漁が終わった春先)さえなければ、どんだけ楽か〜」とbure母のお言葉。先日、同行させてもらおうと予定していたんですが、天候不順のためにあえなく中止。ぢつは内心ほっとしてたりして(笑)
かわりに、といっちゃなんですが、海苔の種を培養しているところを見てきました。



と、その前に。

さて、この山とつまれた白い物体。
「かき殻」でございます。穴をあけ、糸をとおしてセットしたものが山とつまれております。専門の業者さんがおられるそうで。一年中ずーっと作業されて…るのかどうかは不明ですが、佐賀と福岡で数軒あるそう。
でも、なんで牡蠣の殻なんだろうなあ。ホタテじゃいかんのかなあ、
などとくだらんこと考えながら培養している場所へ。


蛎殻糸状体の培養は、2〜3月くらいから始まります。最初からプールの中に殻を吊り下げるのではなく、平面の状態で広げます。水槽の海水も水位15センチくらいしか入れません。
その殻を広げた海水の中に海苔の「フリー糸状体」をミキサーで小さくしたものを振り撒きます。まあ、海苔の種だとおもいねえ。ただし、純粋培養。海水も「滅菌海水」といい、紫外線やフィルターでろ過したりといろいろ方法はありますが、他の藻類が混じらないようにしてあります。


フリー糸状体をミキサーで細かくする過程はこちら
http://kinnori.web.fc2.com/asakusa/asakusa_1.html


で、それが殻の中に潜り込んでいきます。正確には、殻の内側、石灰質に穴を開け、じわじわと菌糸のような枝を張り巡らし、4月くらいにはかろうじて肉眼視できるくらいの黒い点になり、それが広がり真っ黒になるわけです。ある程度広がったら吊り下げます。(吊り下げない生産者もいます)




こんなカンジでプールの中に漬かっております。海苔の胞子が牡蠣殻の内側で育つように、このプールの中の温度などをコントロールされています。
ちなみに上の写真、黒いのが海苔の胞子です。白と茶色が混じっているのは牡蠣の外側。





9月下旬、牡蠣殻の真っ白な石灰質は海苔の種が繁殖、真っ黒けになっております。これを脱石灰、剥ぎ取ってプレパラートにのっけて、光学顕微鏡で胞子嚢の成長具合を見ていきます。


水産試験場で、係りのひとに顕微鏡で見てもらってます。
「んー、(10点満点で)7点から8点ちゅうとこじゃねえ。まあ、順調じゃねえの?」
中学校以来でしょうか、顕微鏡のぞくのって。胞子の分裂具合が…とか。んーむ。


ちなみに、海苔をやってる家はだいたい顕微鏡を持っているそう。嘘でした。持っている家もある、とのこと。たいていは漁業組合の顕微鏡を使ったり、何人かで出し合って購入したりするそうです。まあ、車一台かえるもん、そんな各家庭で買えんわな。

ただ、ここまで精密なヤツではなく、この牡蠣ガラを海苔網に下げ(落下傘、といいますが)牡蠣ガラから乗り胞子が巣立ち、海苔網について海苔の葉を伸ばし始める。そのついたかつかないかの時期を見極めるために網を切っては港に持ち帰り、顕微鏡で観察するそうな。うまくついたら、海苔網を広げて(展開)いきます。
このへんは、「冷凍海苔網の収穫へ」で詳しく書いております。



参考:海苔の生活史
http://www.jf-sariake.or.jp/nori/seikatsushi.html



オマケ。蛸漁につかう蛸壺。