高木久助さんをご存知ですか?

久留米から車で約一時間。秋月の街並みの中ほどに、廣久葛本舗さんはあります。

表に店舗、裏は事務所と工場です。店舗は築240年だそうで。釘を一本もつかっておりません、とのこと。
吹き抜けが気持ちよく、できたての葛きりなどが食べられる喫茶コーナーと、売店が併設されています。

工場といっても、シンプルなもの。
というのも、シンプルなことしかしていないから。葛の根をしぼって、沈殿させて、乾燥させて。


これは葛の根。掘るのは冬の仕事。主に農閑期の農家さんの仕事だったのですが、農業が通年化/兼業化が進んだため、現在では「山師」とよばれるほりこさんが廣久さんに持ち込まれます。太いものでは200kgちかくなるそうな。すごい!

これは最終工程を経て、寝かされる葛。陰干しで2ヶ月、そこから一年、工場の二階で「寝かせ」ます。山沿いの涼しい気候が生きてきます。

とにかく、とんでもない量です。思わず、地震は大丈夫ですか?と聞いてしまいました(笑)


葛屋、という商売は、もともと季節商売なんですね。ちらっと書きましたが、農家さんが農閑期に掘るのと、収穫の時期、タイミングもあいまって、秋口〜冬の仕事です。春から夏は?遊んでたみたいです(笑)いまでは、粗く精製して、半加工品で保存、通年で工場を稼動させています。職人さん、従業員さんも遊ぶわけにはいかんですしねー。また、晒すときに石灰、それを中和させるために硫酸(食用硫酸、といいますが濃度によっては普通に鉄は溶けます)を使います。もちろん、石灰は残ります(アルカリは中和されますが)ので、その分増量となります。この量をコントロールすることによって、半加工のまま保存、通年で工場を稼動させることができます。こういった努力(?)によって、安い葛ができます。

あ、もちろん高木さんところは使いません。自然に沈殿するのを待ちます。晒すのも、回数を重ねて白くしていきます。保存料も使いませんので、年の半分は工場が休んでいます。熱風で乾燥することもないので、膨大な在庫を抱えておられます。銀行が「ほんとに在庫あるんですか?」と調査にこられるそうです(笑)