想いやりファームへ

ほんとうは、早ければ早いほどいいのですが、と言われつつも想いやりファームへ10時過ぎの到着。案の定、集乳は終わり、牛さんたちはお食事タイム。



工場のほうだけ見学。一時間かけて機材を組み立て、一時間かけて瓶詰め。そのあと6時間かけて分解、洗浄します、とのこと。もちろん洗剤を使うのですが、そのあとの水での徹底洗浄。これにつきるとのこと。ガラス越しにしか拝見させていただけなかったのですが、だからこそ「無殺菌」での瓶詰めが可能なんですな。工場へ入るためにまず手洗いに15分。そしてゴム手袋をしてさらに15分の手洗い、などなど、想像を超える徹底した衛生管理が「無殺菌」を支えています。ビンも一本一本スタッフが目視検査しておられます。


逆に、牛がいる環境は野生に近いもの。牛舎は半開放で壁がなく、また牛をつなぐこともありません。一番印象的なのは牛が人懐こい。そして静かなことでした。また、決してスタッフの方が牛を追わない。おなかがくちくなれば、自然と出口の柵のあたりに集まりだし、タイミングを見計らってゲートをあければ一頭一頭牧場へと出て行きます。もちろん、のんびりと餌場でごはんを食べ続ける子もいます。でも、スタッフが無理に牧場へと追い出すことは無い。牛の時間で、この牧場は動いています。




搾乳するところへ向かう場所はコンクリート。衛生管理がしやすい代わりに、牛にとってはストレスとなる硬いコンクリートです。決して100%のファームではないんだが、よりよい方向を求めて試行錯誤、発展されている牧場です。

おもしろかったのが、ソフトクリーム。白くない。黄色いんです。なんで黄色いのか?バター、黄色いですよね?そう。牛乳に含まれる脂肪ってのは、固まると黄色いんです。このソフトクリームの原料は生乳と、ほんのすこしの砂糖だけ。まあ、そのへん知りたい人は調べるか聞いてくださいな。おもろいっすよ。牛乳は凍らせると、しゃりしゃりになっちゃいますよね?決して「滑らかな舌触り」にはならない。じゃあ、市販のものは? はてさてふふ〜。


ちょっと余談ですが、いまんとこの一般的な酪農家だと、夫婦二人で牛100頭を飼ってやっとペイする程度、だそうで。つまり、朝晩二回搾って、牛一頭から30L、一日3000L。もちろん機械代、えさ代、薬代、その他もろもろ掛かってきます。人を雇う余裕はありません。
さらっと「牛一頭から30L」と書きましたが、たとえばホルスタインの体重が約600kgとして、人間に換算すると体重60kgの人が、一日3Lのおっぱいを出しますか?っちゅう話になるわけです。もちろん、人間と牛の違いはあるのでしょうが、そのために品種改良をしてきたのは人間です。10年前は20Lで生活が成り立っていたそうです。濃厚飼料、搾乳の技術の進歩などいろいろ要因はあるのでしょうが、牛に負担がかかるのは間違いないです。
一方、牛乳の値段はあがってますか?むしろ、デフレを理由に下がる一方ではないでしょうか。相変わらず、「消費者目線」を題目に水より安い牛乳が売り続けられています。




「牛乳を搾るために、人間は時間をかけて異常におちちが出る乳牛に品種改良してきました」という長谷川さん。「殺菌をしない牛乳」をつくるために工場内は無菌、牛は半屋外の牛舎と放牧(牛一頭に一町分が理想だそうな)で数十頭の牛を飼ってあります。


「放牧すりゃいいってもんでもないんですよ。濃厚飼料と涼しい環境で、4年ほどで一生分の牛乳を出し尽くして廃棄されるように改良されてきた牛を、なんの手当ても無くいきなり放牧してもそれは「虐待」ですよ」(本当はもっと過激な表現でしたが)というのが印象的でした。