まずは醤油の原料。

  • 丸大豆
  • 小麦

この三つから醤油はできてます。丸大豆、って品種ですか?って聞かれたことありますけど、「丸ごとの大豆」って意味です。

  • 次に、ざっとした工程

1.大豆を柔らかく煮る(蒸す)(蔵ごとに違います)
蒸煮の目的は加熱変性(大豆たんぱく質の)することによって麹菌酵素の作用を受けやすくすることと、もう一つは殺菌する目的も。


2.小麦を丸ごと妙める(ここも蔵によって割って炒めるところも)


炒り砕く(炒熬割砕)工程。この工程によって小麦は殺菌され、さらに澱粉はα化(アルファー化)されて砕かれることによって、麹菌の酵素の作用を受けやすくなります。
炒る方法は、砂を使います。砂を加熱、その砂と小麦を混合することで砂の輻射熱によって小麦中の澱粉をα化します。炒った小麦はハンマーミルなどで砕き割って使用します。


3.大豆、小麦を交ぜ、種こうじを付ける。


製麹(せいきく)って奴ですかね。麹を造ることを製麹といいます。お酒の世界でも一緒。処理された麹原料に種麹を加えて麹室(こうじむろ)に盛り込み、温度は約30℃、湿度ほぼ100%の状態で麹菌の生育を促します。工程の途中で麹原料をかき混ぜる手入れ作業を行なって、足掛け3日(約45時間)で醤油麹ができあがります。


4.3〜4日でこうじが全体に繁殖する(ここも蔵によって特色がでやすいところ)


ここまでが、もやしや(種麹屋)の仕事かな。


5.でき上がったこうじを塩水に入れる。=(もろみ)(素人はここから)


できあがった醤油麹を食塩水(ステンレスでさえ錆びる塩分の強さです)と混ぜ合わせ、発酵タンクに仕込む操作を「仕込み」といいます。この「発酵タンク」もいろいろ。昔は杉の樽が一般的だったんですが、技術の発達(?)により、現在ではFRPの桶、もしくはコンクリの槽で温度管理をしながら醸造していくのが一般的です。中には、コンクリ槽の内側に杉の板を張ったものを使用している蔵も…。まあ、素人がやるにはホウロウあたりがいいのかなー。ポリのはあまり、ね。一夏置くわけですし。なんとなく、なんですけどね。


6.もろみをたるで寝かす。


諸味(もろみ)っても書きます。麹を食塩水と一緒に仕込まれたものが諸味。

諸味は櫂棒(かいぼう)で混合、攪拌を行ないます。これが季節によって、仕込みの期間によって違ってくるところ。諸味は麹の生産した酵素酵母・乳酸菌によって酵素分解が始まり、約6〜8ヵ月で熟成諸味となります。だいたい仕込の時期は遅くとも四月までなので(地域差があるよ!)一夏過ぎて、冬前には出来上がり。


7.寝かせたもろみを絞る(圧搾)


諸味を搾ることを「圧搾」といいます。

槽(ふね)といって木枠で囲んだ大きな箱に約1m四方の圧搾濾布(ろふ)に諸味を包み、何十にも積み重ねていきます。大きな袋にいれてぽたぽたやるところもありますし、機械にかけて圧をかけるやりかたも。もちろん最初と最後では味も色も違ってきます。もちろん、効率(時間)も、ね。


8.絞った液(生醤油)に火入れ (殺菌)する。


搾ったままのものを生醤油(きじょうゆ、なましょうゆ)、又は生揚(きあげ)といいます。
このままでは成分が不揃いであったり、微生物や酵素力価も残存して不安定な状態ですので、後の工程にもありますオリ濾過や成分調整を行なったものが、生揚と呼ぶことが一般的です。
でもねー、非加熱って、じつは美味しかったり。最後の一段なんだけど、やっぱ、一段違うのよね。


成分(規格)調整もこのあとに。搾った生醤油を静置、生オリ(糖や酵素が絡んだ菌体の残骸)が沈んで透明になった液汁の上澄みを抜きとったり、社内規格に合わせて成分調整を行ないます。この成分調整が、蔵によってまた違ったり。某蔵では最長8年のものをはじめ数種類の醤油をブレンドして自社の味を作っているそうです。 これが職人の仕事であり、ぶれない自社の味を保ち続けるためのやりかた。


で、最後の締めが成分調整後の加熱殺菌。この操作を火入(ひいれ)といいます。
火入れの最大の目的は殺菌にありますが、そのほかにも色・味・香りを整えたり、酵素の働きを止めて品質を安定させるなどさまざまな目的があります。火入れは85℃以上で行い、常温に戻るまでに約3〜4日を要しその間にオリが沈降します。沈降したオリは分解され、さらに濾過が行ないます。

ま、クレーム対策の一面もあります。
醤油が醤油サシからたれるじゃないですか。時間がたって乾燥すると白い筋が出るんですよね。
また、一升瓶の液面にうすい酵母膜がはることもよくあります。「カビじゃねーか!」ってお怒りの電話があるんですよね。そらカビですけど酵母が生み出したもんですから害はねえですよー、といちいち説明するのも面倒だし、納得してくれず高圧的な人も多い。そらメーカーも火入れなりアルコール添加したりしますって。コストかかるもん。



これが昔ながらの作り方。こういったものを使い続けていきたいもんですね。
小麦に含まれるたんぱく質、窒素分を天然酵母が分解してできるアミノ酸の旨味、大豆の脂肪分が分解してできるアルコール分などの風味もよく、蔵ごとの特徴、違いを楽しむことができます。
主に小麦の質が香りに、大豆の質が味に影響してきます。

伝統の、本物の、職人が。よく聞くフレーズですが、「これが昔ながらのやり方」というのを知っていないと、宣伝用の言葉に惑わされます。「特醸」「特選」「本仕込み」とかね。
JASの規定以外は、すべて「社内用語」「宣伝文句」です。